相続は、まず戸籍謄本(全部事項証明)の収集からスタートします。
そして、多くの場合、これが最難関です。
相続が発生した場合、戸籍謄本は、被相続人(亡くなった方)が生まれてから亡くなるまでのものと相続人(法廷相続対象のご遺族)全員が生まれてから現在までのものが必要です。
よくあるのが、現在戸籍だけ取得して、全部取ったから大丈夫です、と言われることです。
経験上、全部揃えていただけている方は、ほんの一握りです。
なぜそうなるかというと、制度上の問題です。
まず、戸籍法は、大きいところで2回変わっています。
戦後まもなくの家長制度廃止、それと平成13年頃の電子化による変更です。
戦前の戸籍は、家長とその家族という構成でした。
家長がご存命でも、家長が世代交代すると、戸籍も変わります。
そのため、必要ないと思ってしまう方がいらっしゃいます。
電子化は、平成13年頃から随時、戸籍謄本が活字、横書き、A4になり、全部証明書になったものです。
多くの場合、この電子化以降の戸籍だけ持っている状態であることが多いです。
また、年金等の手続きのために無料で発行される全部事項証明書だけお持ちの方もいらっしゃいます。
これは年金等の手続きにだけしか使えないのですが、これで大丈夫だと思っている方も一定数いらっしゃいます。
また、戸籍は市町村から移動すると、前の市町村の戸籍謄本(除籍謄本)は、現在の市町村では取得できません。
引っ越しをしたときに、律儀に戸籍まで移動される方は、相続の際に、ご遺族が非常に苦労することになるわけです。
このような事情から、戸籍謄本を全部取得できる方は、ごく限られています。
地元に住み続けている方、もしくはこのような知識のある方です。
もしご自身で手続きをされたい方は、頑張って戸籍謄本を全部集める必要があります。
昔と違って郵送もできますし、楽にはなりましたが、結構な労力がかかります。
昭和初期生まれの兄弟姉妹に相続などという場合、人数が多いので、教科書みたいな厚さの戸籍謄本の束になることも珍しくありません。

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